Bicycle 808復刻デザインの歴史

投稿者 :和泉圭佑 on

こんにちは、和泉です。

BicycleといえばNo.63 Riderが一番メジャーです。筆者がマジックに興味を持った2005年頃はRiderだけでなくNo.35 Leagueもギリギリ販売されていました。話によれば1990年代はおもちゃ売り場にはNo.62 Racer #2No.56 New Fanが売っていたそうで、「Riderを求めて買いに来たのに売ってなかったから仕方なくNew Fanを買った」なんて話を聞きます。今では考えられないですね。

BicycleはRiderだけでなく他にもバックデザインがあり、合計で82種類存在します。ところがほとんどの人が見たことあるのはRiderやLeagueぐらい、ギリギリRacer #2あたりではないでしょうか。他のバックデザインは全て廃盤になっており、おもちゃ屋どころかマジックショップでも見つけることは今や不可能となっております。

そんな今や見かけなくなったオリジナルBicycleのバックデザインは、ある時期を境に復刻されるようになります。復刻には2つのパターンがあり、ひとつはUSPC社がゲーム用トランプにデザインとして採用するパターンと、もうひとつは愛好家やメーカーが公式に復刻版を自費生産するパターンです。

 

USPC社製復刻デック

筆者の知る限り、一番最初の復刻デックはBicycle Euchreのデックセットです。ユーカーというゲーム用に構成されたデックが2個とルールブックがついたもので、1989年に販売されています。

バックデザインはNo.47 Model #2が採用されています。しかし厳密には同じではなく、Mountain Bike Designと称されたものになっています。Model #2は1927年に廃盤となっているので、デザインにアレンジが加えられているとはいえ、ほぼほぼ同じModel #2といってもいいでしょう。おそらくこれが最初の復刻になります。

その後1990年にBicycle Pinochleのデックセットが販売されます。これはピノクルというゲーム用の2個セットとルールブックです。以後ユーカーとピノクルはUSPC社より現代に渡りデックセットが販売され続けます。

バックデザインはNo.62 Racer #2が採用されています。Racer #2は記録上1970年に廃盤となっておりますが、Gilt Edgeという金付き加工がされたバージョンが販売されており、しかもRacer #2自体は2010年ごろまで頑張れば定価で手に入ったので、当時あまりこの復刻にありがたみは感じなかったかもしれません。

ちなみにここに同封されているRacer #2は紫色で、1927年以降USPC社が赤・青・緑・茶以外の色で初めて生産したBicycleデザインではないかと思われます。なおデックケースは存在していません。

 

伝説の「Cupid Back」

1997年ごろに、突然No.21 Cupidがデザインされたデックが登場します。木箱に入ったものらしく、赤色にゴールドのメタリックインクが使われているようです。

これがどのような経緯で作られてどのように販売されたのかは謎で、今やUSPC社でも知られていないそうです。筆者も所有はしておらず、オークションで数年に一度しかみかけません。ケースは無く透明のフィルムに包まれて、木製のケースに入っています。どういったフェイスデザインなのか、青色は存在するのか、まったく謎です。

このCupidのように、もしかすると他のバックデザインもこっそり出ていたのかもしれませんね。

 

2000年代初期の復刻デック

その後、ゲーム用のデックセットは2000年になって一気に増えました。なんと6種類も復刻しています。また今回からデックにケースが入っているので、コレクター的にも保管がしやすくなっています。

PinochleとCanastaは青の2個セットで、これら以外は赤と青の2色セットになっています。

Pinochle Games:No.62 Racer #2
Euchre Games:No.47 Model #2
Spades Games:No.27 Eagle
Solitaire Games:No.81 Wheel #2
Rummy Games:No.35 League
Canasta Games:No.56 New Fan

2000年にはRacer #2もNew Fanも廃盤済みになっているでしょうから、いずれも復刻といえるでしょう。しかしデックは52枚フルセットではなかったり、ゲーム用に特殊なインデックスが印刷されていたりするので、実際にマジックで使えるかというとちょっと怪しいかもしれません。しかし80年近く前のバックデザインが安値で手に入るのは嬉しいことです。

注意すべきはEuchreとSolitaireです。Euchre Gamesのパッケージには「Featuring Bicycle Mountain Bike Design, first introduced in 1895」と表記されていますが、デザインは明らかにワンウェイのModel #1ではなく#2がベースになっているので、これは誤りといえるでしょう。そしてSolitaire Gamesのパッケージには「Featuring Bicycle High-Wheel Back Design, first introduced in 1887」とありますが、Wheel BackがHigh Wheelという名前では販売されていなかったですし、またワンウェイのWheel #1ではなく#2がベースになっているのでこれも誤りです。

USPC社に限らず、老舗のトランプメーカーは自社の情報をあまり残さないことがあり、それゆえ誤った情報を記載する場合が多々あります。一般販売するにあたってあえて「High Wheel」と表記した可能性もありますが、いずれにせよ正しい情報ではありません。

 

通常デックとしての復刻

ついにUSPC社は、マジックに使える普通の52枚デックで復刻版を作ります。Vintage Designシリーズという、2006年に販売されたデックです。クロージャーシールには通常のブルーシールだけでなく、初期ロットにだけ採用されている赤い「1st Print」のふたつがあります。ケースはBicycleのところがエンボスされており、フラップの切れ込みが浅いので指が入りづらいのが特徴的です。

No.21 Cupid
No.56 New Fan
No.73 Tangent #2
No.74 Thistle
No.62 Racer #2
No.65 Safety

それぞれ赤と青の2色あります。6個セットになったパッケージ版も販売されており、そこにはCupid、Tangent、Thistleが2色ずつ入っています。

2006年のオハイオ製なのでとても高品質で、しかしあまり人気なかったのかかなり安値でマジックショップでも販売されていましたが、New Fanは2012年にBenjamin EarlがPast Midnightで使用した頃から一気に値段が上がりました。New Fan以外は今でも定価近くの値段で購入することができます。

 

記念デックとしての復刻

2009年にUSPC社は「記念デック」を生産します。2010年のBicycleブランド生誕125周年記念を目前に作られた、オハイオ製のバイシクルです。

バックデザインはNo.57 Old Fanです。Bicycleブランドで一番最初に作られたデザインで、発売は1885年になります。ちなみに今も手に入るRiderは1887年に発売開始されました(明治20年!)。

赤と青の2色あり、ケースはUS8という一番最初のケースデザインが採用され、箔押しされてとてもオシャレです。ジョーカーもJokerではなく「Best Bower」になっていたり、かなり当時の雰囲気が再現されていますが、インデックスに「1885-2010」と書かれているので前述のGamesデックセットのようにちょっとマジックには使いづらいかもしれません。

 

808表記廃止に伴う復刻

正確な時期は不明ですが、USPC社はBicycleについた808というコードを商品パッケージから消し、それに伴いBicycleのケースデザインがリニューアルされました。これがとても不評で後にもとに戻るのですが、この時期2010年にNo.21 Cupidの赤と青が復刻されました。1997年の木箱に入ったデックのリバイバル的な立ち位置なのかもしれません。

 

2010年よりUSPC社は多くの復刻デックを生産していきます。

2010年:No.21 Cupid(赤と青、ゴールドインク)
2011年:No.15 Big Gun(赤と青)
2012年:No.2 All Wheel(赤のみ)
2014年:No.81 Wheel #2(US8B、赤と青、Bicycleブランド生誕130周年記念)
2015年:No.18 Chainless(US8、赤と青)
2015年:No.10 Autobike #3(US8C、緑と茶)
2016年:No.8 Autobike #1(US8A、赤と青)
2016年:No.11 Autocycle #1(Junior No.21、緑と紫)

どれもデックケースはオリジナルのものでしたが、2014年にリリースされたBicycleブランド生誕130周年記念バイシクル以降、昔のデックケースデザインも復刻するようになりました。2014年のWheel #2はUS8B(1894年ごろ)、2015年のChainlessはUS8(1891年頃)、Autobike #3はUS8C(1906~1925年)、2016年はUS8A(1887年ごろ)、Autocycle #1はJunior Bicycle 21という子供向けBicycleがベースになっています。

ちなみに2015年発売のAutobike #3の復刻は、アメリカのディスカウントスーパーTarget限定販売でした。このときに採用されたUS8Cのケースは今までの復刻デックの中で一番オリジナルに忠実です。オモテ面の右下に星マークがあり、これが見分ける判断基準になります。

2015年製以降の復刻デックはどれもRU16がデザインされたクロージャーシールになっております。RU16は1883年まで使われていたものですが、Bicycle発足は1885年なので、当然当時のBicycleにRU16は使用されていませんでしたが、おそらく雰囲気作りのためでしょう。またAutobike #1にはケースに箔押しがあるバージョンが存在し、箔押しのにだけRU16が使われ、通常版は普通のUSPCクロージャーシールが使用されています。

 

USPC社以外が作った復刻デック

このように、USPC社は自社の廃盤となったデザインを復刻させてきましたが、一部のマジックメーカーや個人が復刻デックを作るようになりました。近年だとArrco、Blueribbon、Steamboatなどありますが、Bicycleもあります。

おそらく最初の復刻デックはTheory 11によるもので、2010年製になります。Bicycle Heritage Seriesというもので、通常のBicycleとは全く違うデザインになっています。

No.58 Pedal(赤)
No.59 Pneumatic #1(赤)
No.77 Tri-Tire #2(青)
No.18 Chainless(青)

今までのUSPC社からリリースされていた復刻デックでは選ばれなかったバックデザインがチョイスされています。ちなみに2010年製で、品質はあまり良くありません。今でも安値で手に入れることはできます。

その後2011年、香港のマジシャンZenneth Kok氏がNo.56 New Fanの白と黒を作りました。「ハートの0」という特殊なカードが入っているのが特徴的で、またケースも通常のバイシクルデザインと変わらないものなのでかなり人気で売れたデックです。ちなみに黒は5000個、白は1000個ほど生産したらしく、黒は手に入りやすいですが白はちょびっと値段が高騰気味です。

2012年になってDan and DaveがNo.56 New Fanを復刻しました。特徴的なのは、ケースが1940年代Bicycleがベースになっていること、金の箔押しがされていること、ブルーシールが使われていること、ケースにエンボスがかかっていること、色はネイビーとワインレッドの2色ということです。

他の復刻デックと異なり、デザインはかなりオリジナルに忠実で、Dan and Daveのデック愛を感じます。既に絶版品で値段も高くなっていますが、2012年製とはいえ品質はかなり良いです。

そしてTheory 11から同じ2012年にVintage Design Seriesが新たに発売されます。デックケースはDan and Daveのようにオリジナルに忠実になっており、また復刻デックとして初めてデックのNoが記載されています。

No.55 Nautic(緑)
No.14 Automobile #2(赤)
No.1 Acorn(茶)
No.37 Lotus(青)

5,000セット限定販売で、麻袋に入っていました。他社が作ったデックにしてはめずらしく広告カードが入っておらず、またケースもデックもデザインは通常のバイシクルに忠実で、余計なデザインがされていないので人気も高いです。今は最初のHeritage Seriesより値段は高いです。

2012年以降、他ブランドの廃盤デザインが復刻されることはありましたが、しばらくBicycleブランドのデザインが復刻されることはありませんでした。そして2019年、デアゴスティーニの「ザ・マジック」に応募者限定でVintage Designシリーズが配布されました。

ケースデザインは2006年のVintage Designシリーズそのもので、中はNo.65 SafetyNo.73 Tangent #2です。色はどちらも黒です。2015年に出たAutobike #3の復刻版がアメリカのTarget限定販売だったので日本に流通しなかったように、この2つの復刻デックも海外にはほとんど流通していないことでしょう。

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いかがでしたでしょうか?以下まとめた年表になります。

2020年にはModel #2の復刻が出たそうですね。筆者はまだもっておりませんし、知らない復刻デックは存在しているかもしれません。ご存じの方がいらっしゃれば、是非ともご連絡下さい。

1989 Euchre:No.47 Model #2(紫)
1990 Pinochle:No.62 Racer #2(赤と青)
c1997 No.21 Cupid(赤のみ、ゴールドインク)
2000 Pinochle Games:No.62 Racer #2(青)
Euchre Games:No.47 Model #2(赤と青)
Spades Games:No.27 Eagle(赤と青)
Solitaire Games:No.81 Wheel #2(赤と青)
Rummy Games:No.35 League(赤と青)
Canasta Games:No.56 New Fan(青)
2006 No.21 Cupid(赤と青)
No.56 New Fan(赤と青)
No.73 Tangent #2(赤と青)
No.74 Thistle(赤と青)
No.62 Racer #2(赤と青)
No.65 Safety(赤と青)
2009 No.57 Old Fan(US8A、Bicycle生誕125周年記念)
2010 No.21 Cupid(赤と青、ゴールドインク)
No.58 Pedal
(赤)
No.59 Pneumatic #1
(赤)
No.77 Tri-Tire #2
(青)
No.18 Chainless
(青)
2011 No.15 Big Gun(赤と青)
No.56 New Fan
(白と黒)
2012

No.2 All Wheel(赤のみ)
No.56 New Fan
(ネイビー、ワインレッド)
No.55 Nautic
(緑)
No.14 Automobile #2
(赤)
No.1 Acorn
(茶)
No.37 Lotus
(青)

2014 No.81 Wheel #2(US8B、赤と青、Bicycleブランド生誕130周年記念)
2015 No.18 Chainless(US8、赤と青)
No.10 Autobike #3
(US8C、緑と茶)
2016 No.8 Autobike #1(US8A、赤と青)
No.11 Autocycle #1
(Junior No.21、緑と紫)
2019 No.65 Safety(黒)
No.73 Tangent #2
(黒)

 

参考:
Collector's Handbook(Mrs. Ruth Robbinson、1955)


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